北京オリンピックで世界中が湧くなか、コーカサスの地で紛争が勃発した。ロシアとグルジアの武力衝突だ。今日はこの問題について考えてみたい。
今月8日、ロシア軍が「平和維持」を名目にグルジアに侵攻した。ロシア軍は、グルジアの都市・ゴリやバジアニなどを空爆。死者は1500人にまで達した。
コーカサスには、オセット人という民族が暮らすオセチアという地域がある。この地がソ連領だった頃、オセチアの北半分がロシア領に、南半分がグルジア領に便宜的に境界線が引かれた。同じ国内なら問題はなかったのだが、ソ連が解体し、民族が国境で分断されると、問題が徐々に顕著になってきた。南オセチアの人々は分断された同胞の国・北オセチアとの統合を強く望み、ロシア連邦への帰属意識を前面に出してきたのである。そのため1980年代からグルジア政府とは小さな衝突が繰り返されていた。今回、ロシアは南オセチアの「保護」を名目にグルジアに侵攻しているのである。
しかも、この地域を厄介にしているのはロシアの政策にある。紛争が勃発した南オセチアとアブハジアという地区は実質的にロシア領化されてしまっているのである。この地域はグルジア領にも関わらず、ロシアの査証が免除されているのだ。両地域の住民にはロシアのパスポートも給与されていて、九割以上の住民がロシアのパスポートを保有している。さらに住民たちはロシアの国政選挙にも参加しているのである。実質的にロシア領化されてしまっているという事実がある。グルジア政府の苛立ち具合も想像に堅くない。今回の紛争の契機もこれが一つの要因としてあげられる。
しかし、ロシアの本当の目的がこれではないということは明らかだ。グルジアのNATO加盟阻止、BTCパイプラインの供給阻止が主たる原因なのではないだろうか。
グルジアは親欧米国家である。「真の主権国家」を目指し、ロシアの「くびき」から抜け出したいグルジアは、欧米諸国との接近を政策として続けてきた。中でもNATOとEU加盟は国民の悲願であり、政府も何としてでも加盟したいと考えている。しかし、ロシアにとって見れば、脅威以外の何物でもない。アメリカにおけるキューバのような国が喉元に出来てしまうのである。今回の侵攻もこれを阻止するためと言えるだろう。
そして、第二の理由が資源の問題である。グルジアの隣国アゼルバイジャンの首都・バクーは大産油地である。ここからBTCパイプラインというパイプラインが通っている。BTCパイプラインとはアゼルバイジャンのバクー(B)、グルジアのトリビシ(T)、トルコのジェイハン(C、トルコ語でジェはCで始まる)を結ぶパイプラインで、ロシアを迂回する形で原油を供給しているパイプラインである。資源外交を展開したいロシアにとっては自国内を通過しないパイプラインが存在することは目障りであり、阻止したいと考えているのである。そもそもBTCパイプラインは、資源の多角化を目指すアメリカの政治主導で完成した。距離が長くなることから建設費が莫大になり、当初は民間企業の支持が得られていなかった。しかし、近年原油価格が高騰し、採算が合うようになると、BPなどの協力が得られるようになり、2006年に完成。バクー油田の原油は晴れてロシアを介さずに欧米に輸出されるようになったのである。これがロシアにとっては許しがたいことなのであった。
コーカサスに影響力を残し、資源外交を展開したいロシア。そこにこの問題の根深さがある。資源貧国・日本としても産油地で起こった紛争は他人事ではない。今後も注視していかなければならない。